初めての米粉パン用米粉の製粉
米粉の研究を始めるにあたって、まともな米粉を作れないと品種間の比較ができないことがよくわかり、なんとかして質のよい米粉を作らないといけなくなった。
製粉の外注をしようかと思ったが、当時(2007年)調べた限りでは、最低で30キロくらいの米粉がないとできないようであった。
自分の手持ちは多くある品種で10キロ、少ないと2キロくらいしかない。
それで外注はあきらめ、新潟県の研究所に製粉をさせてもらいに行くこととなった。
基本的なやり方は文献とかで知っていたが、実際に見てみると想像しているものとはずいぶん違っていた。
研究用だから全自動とはいかなくても、多くの作業は機械がやってくれるものと思っていた。
でも、実際にやってみると、かなり手間がかかり、体力仕事であることがよく分かった。
で順であるが、まずはバケツをつかって米をとぐ。炊飯するときと同様に糠を取るのであるが、方法を教わるまでバケツを使うとは考えてなかった。
最後の一回は40℃のお湯で洗い、米自体を温める。これは、次の酵素反応の効率を上げるためである。
洗米が終わったら、ペクチナーゼという酵素とクエン酸ナトリウムが入った40℃の溶液につける。
ペクチナーゼは細胞壁の成分の一つであるペクチンを分解する酵素である。この酵素が働くことで米の形を維持しつつ、米がつぶれやすくなる。この操作で、米粒が指で簡単に砕けるようになる。
つぎに、40℃に恒温器に入れて1時間おく。酵素活性が40℃くらいが一番いいらしい。
酵素液に漬けて米が柔らかくなったら、余分な水を脱水機で脱水する。これは豆腐などで使っている機械らしい。
脱水後、ようやく製粉となる。この下の写真は当時使われていた気流粉砕機である。
米を入れる速度や粉砕機の回転数とかの調整がまるで分からず、新潟の人に任せっぱなしになってしまった。かなり熟練がいる操作であると感じた。
粉砕機の中はこのようになっている。掃除がしにくかった。
粉砕後、乾燥機にかける。粉砕後の米粉の水分は20%程度であり、このままではカビが生えてしまうので、15%以下にまで下げる。
この乾燥機は、加熱した空気を循環させて乾燥させる方式である。温度変化などからどれくらい脱水したかを見ていた。これも調整がよく分からず、水分がバラバラの米粉になってしまったのを覚えている。
乾燥したら、室温で冷やし、終了となる。
朝から晩までかかって、最大でも10点の米について粉砕するのが精一杯であった。
米の品種間で米粉パンの適性を見ようと思えば、同じような品質の米粉が必要となる。しかし、これはかなり難しい作業になることが、最初の製粉作業でよく分かった。
炊飯米や成分の品種間差を見るのとは訳が違っていた。
自分がそれなりに均質な米粉ができるようになるには、けっこう時間がかかることとなる。