稲作の単収の多い市町村
都道府県別の10aあたりの収穫量は、長野県が1位であることは分かった。
ならば市町村別ならどうかと思い、調べてみた。
2007年から2016年における、10a当たりの稲の収穫量のランキングを作ってみたところ、以下の表のようになった。
順位 | 市町村名 | 県名 |
10aあたり収量 (2007~2016年) |
1 | 中山町 | 山形県 | 665 ± 15 |
2 | 立科町 | 長野県 | 663 ± 14 |
3 | 天童市 | 山形県 | 659 ± 15 |
4 | 佐久市 | 長野県 | 656 ± 13 |
5 | 山形市 | 山形県 | 654 ± 16 |
6 | 南箕輪村 | 長野県 | 650 ± 18 |
7 | 諏訪市 | 長野県 | 646 ± 17 |
8 | つがる市 | 青森県 | 644 ± 27 |
9 | 河北町 | 山形県 | 642 ± 12 |
10 | 伊那市 | 長野県 | 641 ± 17 |
11 | 松本市 | 長野県 | 637 ± 16 |
12 | 茅野市 | 長野県 | 636 ± 19 |
13 | 箕輪町 | 長野県 | 635 ± 17 |
14 | 小諸市 | 長野県 | 633 ± 32 |
15 | 池田町 | 北海道 | 632 ± 18 |
16 | 松川村 | 長野県 | 632 ± 22 |
17 | 寒河江市 | 山形県 | 632 ± 14 |
18 | 上山市 | 山形県 | 632 ± 16 |
19 | 安曇野市 | 長野県 | 631 ± 19 |
20 | 塩尻市 | 長野県 | 629 ± 13 |
これは、農林水産省の作況調査(水陸稲、麦類、豆類、かんしょ、飼料作物、工芸農作物)のページの下の方にある「市町村別データ」から各年度の10a当たり収量データをダウンロードし、10年分の各市町村の平均値を上から順番に並べたもの(市町村名に変更があったり、データがない場合は除外している)。
10a当たり収量は、10年分の平均値±標準偏差で書いている。
1位は山形県中山町というところで、過去10年で5回も全国1位となっている。
2位は長野県立科町で、過去10年で3回全国1位であった。
これらの町がどうして生産性が高いのかが気になるところだが、ちょっと調べた限りではよく分からなかった。
ベスト20に入る市町村を都道府県別に数えると、以下のようになった。
長野県 | 12 |
山形県 | 6 |
青森県 | 1 |
北海道 | 1 |
ベスト50では以下のようになった。
長野県 | 23 |
山形県 | 14 |
青森県 | 9 |
福島県 | 3 |
北海道 | 1 |
どちらも、長野県が最も多かった。
長野県はすごい。
長野県の稲作は日本一
各都道府県の稲の単収を調べてみた。
順位 | 都道府県名 | 単収(kg/10a) |
1 | 長野 | 621 |
2 | 山形 | 595 |
3 | 青森 | 586 |
4 | 秋田 | 573 |
5 | 山梨 | 547 |
6 | 福島 | 542 |
7 | 北海道 | 541 |
8 | 新潟 | 541 |
9 | 栃木 | 540 |
10 | 富山 | 539 |
これは、政府統計の総合窓口(e-stat)の中にある作物統計調査-作況調査(水陸稲、麦類、豆類、かんしょ、飼肥料作物、工芸農作物)-平成28年産作物統計(普通作物・飼料作物・工芸農作物)より水稲の項目をダウンロードし、2016年産米の10a当たり平均収量の都道府県別のランキングをしたものです。
稲は南方の作物なのに、長野県が1位で、山形県が2位、青森県が3位とかとなっていて、どちらかというと北の方にある県が上位となっていた。
いつ頃から長野県が1位なのかを知りたいと思い、平年収量の変遷を見てみたのが以下の図である。
これは、e-statの作物統計-作況調査-長期累年より、それぞれのデータをグラフにしたもの。
同じ統計で実際の単収もグラフ化してみたのは下の図である。
いくつかの県では1980年代頃から単収が伸びていないのに対し、長野県はほぼ一貫して単収が伸びている。
1970~1980年代は他の県に抜かれていたようだが、1990年代後半からはほぼ1位となっていた。
なぜ長野県の単収が多いのかが気になって調べてみたら、水稲の収量構成要素の統計なんてものが見つかったので、長野県の特徴をまとめてみたのが下の表となる。
項目 | 長野県の順位 | 1位の都道府県 |
1㎡当たり株数 | 6位 | 北海道 |
1株当たり有効穂数 | 17位 | 熊本県 |
1㎡当たり有効穂数 | 7位 | 北海道 |
1穂当たりもみ数 | 22位 | 栃木県 |
1㎡当たり全もみ数 | 3位 | 北海道 |
千もみ当たり収量 | 2位 | 鳥取県 |
粗玄米粒数歩合 | 2位 | 新潟県 |
玄米粒数歩合 | 13位 | 石川県 |
玄米千粒重 | 16位 | 岐阜県 |
10a当たり粗玄米重 | 1位 | 長野県 |
玄米重歩合 | 20位 | 岩手県 |
10a当たり玄米重 | 1位 | 長野県 |
これは、作物統計-作況調査(水陸稲、麦類、豆類、かんしょ、飼肥料作物、工芸農作物)-平成28年産作物統計(普通作物・飼料作物・工芸農作物)より、「水稲の収量構成要素(水稲作況標本筆調査成績)(全国農業地域別・都道府県別)」をダウンロードしてランキングをつけたものです。
自分にとっては意外なことに、株数や穂数などの要素で、長野県が1位であるものは一つもなかった。
収量の構成要素のいずれもが優れていることが、結果として単収1位になったものと自分は解釈した。
長野県の知り合いに聞いてみたところ、気象条件で以下のような要因があることを教えてもらった。
・夜温が低く、稲の消耗が抑えられる
・夏季の降水量が少ない
・台風の襲来が少ない
・低湿度のため、いもち病などの病害発生が少ない
そうなると、北の方にある地域の方が相対的に有利となるということとなるだろう。
将来、温暖化が進むようなことがあれば、梅雨も無い北海道が単収日本一になる日が来るのかもしれないかとも思ったりもした。
日本の水田の最北端、最南端、最高地点、最低地点について
表題の通り、日本における稲作の最北端、最南端、最高地点、最低地点を調べてみた。
最北端:北海道遠別町清川(北緯45度45分。東経141度52分)
Googleで「水田 最北」と調べてみたら、すぐに見つかった。
宗谷岬までは車で2時間程度で着くようだ。
日本最北端に近いような土地でも栽培ができるというのが驚きである。
最南端:沖縄県八重山郡竹富町南風見(はいみ)(北緯24度16分15秒 東経123度52分0秒)
今度はGoogleでも分からなかった。
石垣島で稲を栽培していることは聞いたことがあったので、思い切って沖縄県農業研究センターの石垣支所に電話してみた。
そしたら、親切にも調べてくれて、翌日に回答をくれた。
西表島が沖縄で一番南で栽培さてている場所で、南風見というところに水田があることを教えてくれた。
昔はその南にある波照間島でも栽培されていたようだが、今はもう栽培していないらしい(いつやめたかは聞き忘れた)。
ちなみに、上に書いた緯度と経度はwikipediaに書いてあったもので、実際の水田の正確な場所ではない。
北端と南端との距離を調べてみたら、南北には2270キロメートル、直線距離は2795キロメートルの違いがあることが分かった。
最高地点:長野県木曽郡木曽町開田高原(標高1260メートル)
以前に長野県職員の知り合いから、標高1000メートルを超えるところに県の農業試験場があるという話を聞いたことがあった。
試験場でその高さなら、一般の水田はもっと高いところにあるだろうと思い、その知り合いに問い合わせてみた。
そしたら、ありがたいことに農業普及センターまで確認してくれて、一番高所にある水田を教えてもらえた。
木曽町の開田高原というところに水田があり、そこの標高が1260メートルにもなるらしい。
この高さは、8府県(千葉、沖縄、大阪、京都、茨城、香川、佐賀、福岡)よりも高い。
天空の稲作とでも呼んでみたくなる。
気圧を調べたら0.8585気圧しかないようで、なんか光合成にも影響がでてきそうな気もする。
以前に大潟村に行ったときに、村全体が海抜ゼロメートル地帯であるという説明を聞いたことがあった。
そこで、大潟村役場に聞いてみたら、マイナス4メートルくらいの場所にも水田があるということを教えてくれた。
おそらくはここが一番低い水田とは思うが、もしかしたら他にも低いところがあるのかもしれない。
例えば、輪中のあるあたりにも標高の低い土地はあるはずなので、どこかにマイナス5メートルくらいの水田があったりするかもしれないかとも思っている。
日本で栽培されている水稲品種について
大学で講義をすることとなった。
その中で日本ではどれだけの品種数のイネが栽培されているかを説明しようかと思ったら、実は正確にはよく知らなかったので、調べてみた。
農林水産省のホームから、 【政策統括官】 →【 米(稲)・麦・大豆】 → 【米麦の農産物検査】の中で、「農産物検査を行う産地品種銘柄の取扱いについて」というページがあり、平成29年産産地品種銘柄一覧のpdfファイルがダウンロードできので、これを素に作成した
どこかに一覧表のエクセルファイルでもないものかと思ったが、なぜか見つからなかった。
pdfファイルから品種名をコピーしてエクセルに貼り付け、重複を削除することで品種一覧を作成するとともに、品種数を調べた。
そうしたところ、2017年においては、以下のように275品種が栽培されたことが分かった。
あいちのかおり、LGCソフト、あかね空、あきげしき、あきさかり、あきたこまち、あきだわら、アキツホ、あきのそら、アキヒカリ、あきほなみ、あきまさり、あきまつり、あきろまん、アケボノ、あさひの夢、あさゆき、あやひめ、あわみのり、イクヒカリ、いただき、いのちの壱、いわてっこ、うこん錦、えみのあき、エルジーシー潤、おいでまい、オオセト、おきにいり、おてんとそだち、おぼろづき、おまちかね、おわら美人、かぐや姫、かけはし、きたくりん、キヌヒカリ、きぬむすめ、キヨニシキ、きらほ、きらら397、きらりん、きらり宮崎、ぎんさん、きんのめぐみ、くまさんの輝き、くまさんの力、げんきまる、こいごころ、こいもみじ、こころまち、こしいぶき、コシヒカリ、ゴロピカリ、さいこううち、さがびより、さきひかり、ササシグレ、ササニシキ、さち未来、さとじまん、さぬきよいまい、さわかおり、さわのはな、さわぴかり、スノーパール、せとのにじ、そらゆき、たかたのゆめ、たかねみのり、たきたて、たちはるか、だて正夢、たんぼの夢、ちほみのり、ちゅらひかり、チヨニシキ、つがるロマン、ツクシホマレ、つくしろまん、つくばSD1号、つくばSD2号、つぶぞろい、つぶゆき、つやおとめ、つや姫、でわひかり、てんこもり、てんたかく、とがおとめ、とちぎの星、トドロキワセ、とねのめぐみ、どまんなか、トヨニシキ、とよめき、どんとこい、どんぴしゃり、なごりゆき、なすひかり、なつしずか、ナツヒカリ、なつほのか、ななつぼし、にこまる、ねばりゆき、ハイブリッドとうごう3号、はいほう、はえぬき、はぎのかおり、ハツシモ、ハナエチゼン、はなさつま、はなの舞い、はるみ、ヒエリ、ヒカリッコ、ヒカリ新世紀、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、ひゃくまん穀、ふくいずみ、ふくのいち、ふくのさち、フクヒカリ、ふくひびき、ふくまる、ふくみらい、ふさおとめ、ふさこがね、ふっくりんこ、ホウレイ、ほしじるし、ほしのゆめ、ほしまる、ホシユタカ、ほっかりん、ほほえみ、ほほほの穂、ほむすめ舞、まいひかり、まいひめ、まっしぐら、まなむすめ、みえのえみ、みえのゆめ、みずかがみ、ミズホチカラ、みずほの輝き、みつひかり、みどり豊、ミネアサヒ、みねはるか、みのにしき、ミルキークイーン、ミルキーサマー、ミルキープリンセス、み系358、むつほまれ、むらさきの舞、めんこいな、やまだわら、やまのしずく、ヤマヒカリ、ゆうだい21、ゆかりの舞、ゆきおとめ、ゆきさやか、ゆきのはな、ゆきのめぐみ、ゆきの精、ゆきひかり、ゆきむすび、ゆきん子舞、ゆめおうみ、ゆめおばこ、ゆめかなえ、ゆめさやか、ゆめしなの、ユメヒカリ、ゆめひたち、ゆめぴりか、ゆめまつり、ゆめみづほ、レイホウ、レーク65、わさもん、愛のゆめ、愛知123号、一番星、越南291号、越路早生、縁結び、黄金錦、黄金晴、夏の笑み、花キラリ、華麗舞、亀の蔵、亀の尾4号、吉備の華、京の輝き、金のいぶき、金光、金色の風、吟おうみ、銀河のしずく、元気つくし、五百川、黒むすび、彩、彩のかがやき、彩のきずな、彩のほほえみ、彩のみのり、彩南月、祭り晴、三重23号、山形112号、山形95号、紫の君、実りつくし、秋のきらめき、秋の詩、秋音色、秋田63号、出羽きらり、春陽、松山三井、笑みの絆、新生夢ごこち、新之助、森のくまさん、瑞穂黄金、晴るる、青天の霹靂、赤むすび、雪の穂、千秋楽、大地の星、大地の風、大粒ダイヤ、淡雪こまち、中生新千本、朝の光、朝日、天のつぶ、天使の詩、天竜乙女、土佐錦、東北194号、鍋島、南国そだち、日本晴、能登ひかり、農林1号、農林48号、姫ごのみ、風さやか、兵庫ゆめおとめ、萌えみのり、北瑞穂、北陸193号、夢いっぱい、夢ごこち、夢しずく、夢つくし、夢の華、夢みらい、夢一献、里のゆき、里山のつぶ、恋の予感、和みリゾット
自分は一応は米の研究をしているが、恥ずかしながら7,8割は見たこともない品種であった。
粳米は275品種も栽培されているが、そのうち198品種は一つの都道府県のみで栽培され、29品種は二つの都道府県だけで栽培されていた。
10都道府県以上で栽培されている品種は、以下の13品種しかなかったりする(括弧内は都道府県数)。
- コシヒカリ(44)
- ひとめぼれ (34)
- ミルキークイーン (34)
- あきたこまち (31)
- キヌヒカリ(27)
- ヒノヒカリ(27)
- にこまる(24)
- みつひかり(19)
- 夢ごこち(18)
- あきだわら(17)
- 日本晴(16)
- ヒカリ新世紀(14)
- きぬむすめ(11)
やはりコシヒカリがダントツに多く栽培されていた。
ついでに糯米について調べてみたところ、以下の72品種があることが分かった。
あかりもち、アネコモチ、あぶくまもち、オトメモチ、カグヤモチ、カグラモチ、きたのむらさき、きたふくもち、きたゆきもち、きぬのはだ、きぬはなもち、きねふりもち、クレナイモチ、こがねもち、ココノエモチ、こもちまる、こゆきもち、サイワイモチ、さつま絹もち、さつま黒もち、さつま赤もち、さつま雪もち、しろくまもち、するがもち、たかやまもち、たつこもち、たまひめもち、タンチョウモチ、ツキミモチ、でわのもち、ときめきもち、とみちから、はくちょうもち、ハクトモチ、はりまもち、ヒデコモチ、ヒメノモチ、ヒヨクモチ、ふさのもち、マンゲツモチ、まんぷくもち、ミコトモチ、みやこがねもち、ミヤタマモチ、もちひかり、モチミノリ、もちむすめ、もち美人、モリモリモチ、ヤシロモチ、ヤマフクモチ、ゆきみのり、らいちょうもち、わたぼうし、葵美人、喜寿糯、群馬糯5号、恵糯、滋賀羽二重糯、式部糯、酒田女鶴、十五夜糯、新羽二重糯、新大正糯、石川糯24号、朝紫、白山もち、風の子もち、峰のむらさき、峰の雪もち、夕やけもち、鈴原糯
酒米については、以下の106品種があることが分かった。
いにしえの舞、おくほまれ、きたしずく、ぎんおとめ、こいおまち、さがの華、さけ武蔵、しずく媛、しらかば錦、たかね錦、ちほのまい、とちぎ酒14、はなかぐら、ひたち錦、ひだほまれ、ひとごこち、ひより、フクノハナ、愛山、伊勢錦、一本〆、羽州誉、越の雫、越神楽、越淡麗、華さやか、華錦、華吹雪、華想い、改良信交、改良八反流、改良雄町、亀粋、菊水、弓形穂、京の華、京の華1号、強力、玉栄、金紋錦、吟ぎんが、吟のさと、吟の精、吟の夢、吟吹雪、吟風、九頭竜、結の香、古城錦、五百万石、佐香錦、山酒4号、山田錦、山田穂、滋賀渡船6号、若水、酒未来、秋の精、秋田酒こまち、祝、出羽の里、出羽燦々、新山田穂1号、神の舞、神の穂、神力、星あかり、西海134号、西都の雫、石川門、雪女神、千本錦、総の舞、蔵の華、但馬強力、杜氏の夢、渡船、渡船2号、白菊、白鶴錦、八反、八反錦1号、八反錦2号、美郷錦、美山錦、富の香、舞風、風鳴子、兵庫錦、兵庫北錦、兵庫夢錦、兵庫恋錦、豊国、豊盃、北陸12号、夢の香、夢吟香、夢山水、野条穂、雄山錦、雄町、誉富士、龍の落とし子、露葉風、辨慶、壽限無、彗星
糯米よりも酒米の方が品種数が多いのが意外だった。
米粉パン向き品種「ミズホチカラ」について
水稲品種「ミズホチカラ」は不思議な品種である。
グルテンを加えて作る米粉パンも、グルテンフリーの米粉パンもよくできる品種なのである。
小麦のタンパク質にはグルテニンとグリアジンがあり、生地を捏ねるとこれらのタンパク質が結合し、グルテンを形成する。
米のタンパク質にはグルテニンとグリアジンに相当するものがないので、グルテンフリー米粉パンを作るには、グルテンの代わりとなるものを加えるのが一般的である。
古くから用いられてきた副原料は、増粘多糖である。
約40年前の報告でも、Nishita et al.により、HPMC(Hydroxypropyl Methylcellulose)を添加して作った米粉パンについての論文がある。
「ミズホチカラ」という品種の米粉は、グルテンや増粘多糖とかも使わずパンができる品種である。
米粉に砂糖、塩、油、イーストを加えて、ホームベーカリーで焼くと、よく膨らむパンができる。
この原因は今のところよく分かっていない。
ミズホチカラの成分やグルテンを加えて作った米粉パンについては以前に調べたことがあって、以前に論文を出している。
この時は、米粉80%・小麦グルテン20%の割合で混ぜて粉を使ってパンを作っていて、コシヒカリのパンよりも膨らみが大きかったことを示している(図1)。
左:「コシヒカリ」のパン(比容積3.8)、右:「ミズホチカラ」のパン(比容積4.1)
これはアミロース含量の違いが原因である。
コシヒカリのアミロース含量が18.0±0.2%であるのに対し、ミズホチカラのアミロース含量は23.3±0.4%となっており、ミズホチカラは、コシヒカリよりも5%くらいアミロース含量が高かった。
去年(2015年)ミズホチカラでHPMCやグアーガムなどを加えずにパンができるという話を初めに聞いたときには、半信半疑であった。
論文を書いたときに使った米粉がまだ残っていたので、試しに焼いてみたら、確かにきれいに膨らんだ(図2)。
左「コシヒカリ」のグルテンフリー米粉パン、右「ミズホチカラ」のグルテンフリー米粉パン
ミズホチカラは一般的な品種とは異なり、台湾や韓国の品種の血が濃い品種である(図3)。
図3 ミズホチカラの系譜
ミズホチカラのパンがうまくできるのは、これらの品種の影響が遺伝されているのだろう。
何人かの知り合いに密陽23号や水原258号の種子か米を持っているか聞いてみたのだが、誰も持っていなかった。
そんなわけで、どの品種がこの製パン性に関わっているのかは分かっていない。
山形大学の西岡教授らのグループで、米粉のみで作ったパンについて報告されている。
これによると、75~106μmの米粉を用いた時に最もよく膨らんだことが書かれていた。
しかし、この時に用いたミズホチカラの平均粒径は32.9μmであり、これよりも細かい粉であった。
おそらくは粉としての性質が原因ではなく、品種の何かが原因なのであろう。
ミズホチカラを親に持つ品種として、「モミロマン」「べこあおば」「モグモグあおば」などがある。
「モグモグあおば」の米粉はあったので焼いてみたが、ミズホチカラのようにはならなかった(図3)。
左「ミズホチカラ」のグルテンフリー米粉パン、右「モグモグあおば」のグルテンフリー米粉パン
アミロース含量もミズホチカラと同程度のはずなのに、膨らみとかきめの細かさとかがけっこう違っていた。
なぜ膨らみが違うのかはやっぱり分からない。
熊本地震から1ヶ月(その5)
熊本地震の本震が起きてから3日目(18日)、近所のドラッグストアに買い物に行くと、ミネラルウォーターが販売していた。
わずか3日で買えるようになるとは思わなかった。
他に買い物している人を見ても、水を買っている人はほとんどいなかった。
自分もまだストックがあったので買ってない。
濁り水も3日目にはある程度は収まってきて、5日目くらいにはほぼ普通の水に戻っていた。
6日目には水質調査の結果が出て、水道水は飲用に問題がないという結果が出た。
隣町にあるスーパーに行くと、水が大量に売っていた。
水とお茶を合わせると、段ボール箱200箱以上はあったように思う。
自分の住んでいる合志市では、1週間で水不足がなくなった。
復旧に関与した関係者の皆様方には本当に感謝である。
本震から1週間で近くにある店のほとんどは営業を再開した。
1ヶ月たった今では、ほぼ普段通りの生活に戻っている。
しかし、被害の大きかった益城町や西原村、南阿蘇村の人たちは、まだまだ復旧にはほど多い状況であろう。
自分の住んでいるところでも、少し高い建物に行けば、西原村の風力発電所が見える。
自分は普通の生活をしているのに、見えるところにある場所でまだ苦しんでいる人がいると思うと、複雑な気分になる。
自分にできることとして、少々の募金はした。
少しは復興の役に立ってくれることを願う。
熊本地震から1ヶ月(その4)
本震があった翌日(4月17日)、買い出しに出かけることになった。
水とガソリンには不足はなかったのだが、子供の離乳食がなくなってきていた。
近所のスーパーやドラッグストアとかはどこも再開しておらず、少し離れたところに行く事にした。
被害の少なそうな玉名市に向かった。
玉名市に入って最初に見つけたドラッグストアは店の中が激混みであった。
100人くらいのレジ待ちの人がいたんじゃなかろうか。
離乳食は見つかったものの、会計までに1時間はかかりそうだったので、買うのをやめにして次のところに行った。
新玉名の駅前に店があったので行ってみたら、今度はレジにほとんど人はいなかった。
わずか数分の距離で全く状況が違っていた。
ただ、水とかがないのは変わらずであった。
ついでに市街地に入ってみると、どこも普通にお店が開店しているのに気づいた。
ペットボトルの水はどこもないが、それ以外のものは普通に手に入る。
レストランまで開いていたので、外食することもできた。
車で1時間も行かないのに、街が普段通りになのが不思議であった。
今回の地震は、東日本大震災の時と違って、小さな範囲で大きな被害が出たのだと感じた。
ニュースとかで被災地の品不足の状況が報道されているを見ると、避難所にいる人たちをバスとかで一時的に県の北部とかに連れて行ってもよかったのではないかと思う。
益城町や西原村とかでも全ての道路が使えなかった訳でもなさそうだったし。
被災地に近いとはいえ、現地を見てないから机上の空論かもしれんが。