米粉の安価な脱水と乾燥方法
米粉の研究を初めてしばらくは、新潟まで出張して製粉をさせてもらっていた。
研究が本格化して1年ほど過ぎた頃(2008年)、自分のいた研究所で米粉の製粉機を買うこととなった。
研究所の一般機械整備の予算をほぼ全額使って購入してもらった。
非常にありがたいことであるが、しかし、他のものが一切買えなくなってしまった。
製粉行程は前回書いたが、どうしても必要なのが、酵素液につけた米を脱水する機械と、製粉したあとの粉を乾燥する機械である。
新潟県の人に聞いたら、脱水機は数十万円、乾燥機は数百万らしい。
でも自分の研究費で買えるのは10万円までであり、これでなんとかしないといけなかった。
脱水については、以前から衣服用の洗濯機の脱水機を使えば何とかなりそうだと思っていた。
米は大抵5キロ程度で使うので、5キロ以上の衣服を脱水できてなるべく安い洗濯機を探したら、二槽式の洗濯機を見つけた。
今でもまだ売っていたことに驚きであった。
脱水専用の機械も売っていたが、最大重量が小さかったのでやめておいた。
メーカーに電話をかけて、米を脱水できるか一応は聞いてみたが、当然のことながらやったことがないという。
そこで購入して試してみることにした。
米はそのままだと脱水機から出て行ってしまうので、タマネギ袋と自分たちが読んでいる袋に入れると、米はこぼれずに脱水できることが分かった。
これで米の脱水は可能となった。約5万円ほどですみ、大幅なコスト削減となった。衛生面の問題はあるだろうが、実験にしか使わないのでこれでよしとした。
問題は製粉後の乾燥であった。
同じように衣服用の乾燥機を買って試して見たのだが、これがなかなかうまくいかない。
どんな袋を使っても、乾燥機の中で袋が破けてしまい、中が粉だらけになってしまうのである(見たくもないので写真は撮ってない)。
一度粉だらけになると清掃が大変で、パートさんから何度も文句を言われてしまい、何回か試してこの方法はあきらめることとなった。
この乾燥機は作業着の乾燥用に転用し、今でも使っている。
バットに薄く米をひいて恒温器に入れて乾燥させてみたが、これだと数がこなせない。
あれこれ試してみて、最終的にやってみたのは、不織布に米粉を入れて、恒温器でしばらく置くというものであった。
不織布は粉漏れが少ないものをネットで探した。炭袋とかいうらしい。
これに5キロの米粉(水分20%程度)を入れ、65℃で一晩おくと15%以下の水分となり、カビが生えるようなことはなくなった。
もちろん恒温器に入れる米粉の量によって時間や温度を変えたりした。
初めは、この方法だと乾燥にムラが出るのではないかと思っていたのだが、やってみるとほとんど水分ムラがないことが分かった。
袋いっぱいに米粉を詰めても、袋の外側でも中の方でもほとんど同じ水分量であった。これはかなり意外な結果であった。
それでも一応は乾燥後に米粉をよく混ぜて保管していた。
この不織布は一袋で数百円していたように思うが、それでも数百万の乾燥機を買うことを思えば安いものである。
恒温器は10万円を下回るものであるし、他にも使い道のある機械なので乾燥以外にも色々と活用できた。
これにより、ようやく自分の研究室でも米粉製粉が可能となり、実験を進めやすくなった。
体力仕事なのは変わらなかったが。